光トポグラフィーのうつ病診断はあまり意味がないと思う理由

私は大学の卒業論文で、光トポグラフィーを利用した研究を行いました。
以下は、光トポグラフィーに対する、私の個人的な思いが多く含まれます。
光トポグラフィーの製造メーカーから説明を受けて、半年間ほど機械を色々と操作したことがある人間が何か言ってるな、程度に読み進めてください。

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計測するための、帽子のような機械を頭につけるのですが、少し頭や体が動いただけでノイズが混入します。
「椅子に座って計測できる」という手軽さが、ノイズが混入しやすくなるというデメリットを生みやすくなってしまいます。
そういった体の動き以外でも、心拍や脈などもノイズとして混入します。
脳の血液量の変化を見たいのですが、それだけでなく色々なノイズが混ざったグラフが出力される、ということです。

また、うつ病の診断には、「言語流暢性課題」が使われているそうです。
これは、例えば「『あ』のつく食べ物を思いつくだけ言ってください」というような検査なのですが、そのときに口を開けて声を発します。
私もこの方法で何度もデータを取ってみたのですが、グラフが反応したのは、脳波ではなくて口や頭の動きなのでは?といった気持ちが今でもあります・・・。

そのようなノイズをある程度自動除去するモードが搭載されていますが、今のところ、完全に除去してグラフを出力することは実現できていないようです。
研究が進み、そういったデメリットが無くなれば、名実どおりのかなり手軽で有用な先進医療機器だと思います。

装着する部位によっては、まともにデータが取れずに何度も装着しなおしていました。
髪の毛を上げておでこ(前頭葉)に付けるのであれば、まずまずのデータが取れるようですが、それ以外の髪がある部分では、雑音だらけで無意味なグラフになっていることがほとんどでした。
うつの検査では、基本的に前頭葉の活動状況を見るはずなので、あまり関係が無いかもしれませんが・・・。

また、診断基準が明確ではないと感じました。
光トポグラフィを導入している、東大病院のホームページに、以下の記載があります。

うつ病(大うつ病性障害)、躁うつ病(双極性障害)、統合失調症に罹患されている方の光トポグラフィー検査のデータと臨床症状に基づく鑑別診断の結果の一致率は、それぞれ約7~8割です。

また、このような記載もされています。

結果は確定診断ではなく、あくまで臨床症状にもとづく鑑別診断の補助として用います。

http://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/kokoro/より、上記2部分を引用しました。)

かなり昔、テレビ番組で光トポグラフィーが取り上げられていました。
細かい部分は忘れてしまいましたが、その番組を見ていると、光トポグラフィーは精神的な病気を目視で判定できる画期的な装置、という印象を受けました。
しかし実際は、かなりあいまいなものだと感じました。

また、光トポグラフィーの診断結果は、あくまで治療方針を決める際の補助に使われる、ということが書かれています。
そのため、現在のかかりつけ医が光トポグラフィーに対して否定的であれば、せっかく受診してもあまり意味のないものになってしまう可能性もあります。
私のように、現時点の光トポグラフィーの信頼性に、疑問を感じている専門家も、少なからず居られると思います。

メリットとしては、痛みや体への悪影響がないことです。
レントゲンのように、人体に影響があるため毎日のように何度も測れない、というものではありません。
また、頭につけるといってもそんなに重たいものではありませんし、計測時間も短いので、肉体的な負担もほとんどありません。

光トポグラフィーを病院で受けようとすると、施設自体も限られていますし、かなり高額な検査料を取られます。
予約もたくさん入っていて、診察はしばらく先になってしまうという病院もあるようです。
ですが私は、今現在は高額な料金を払ってわざわざ受診する価値はそこまで無いと思います。

決して光トポグラフィーのうつ病診断を批判しているわけではありません。
かかりつけの医師に勧められた、テレビなどで見て受診してみたいと感じた、という方は、受診されてみれば良いと思います。
ただ、うつ病の通院では色々とお金が掛かりますし、仕事も続けられなくなるなど、お金に対して不安に感じている方も多いと思います。
そういった方は、今はまだ検査料金も高額ですし、無理して受診せずに見送ったほうが良いと思います。

ちなみに、『光トポグラフィー』という名称は、日立メディコの独自の名称です(コカ・コーラのようなものです)。
島津製作所では、別の名称で販売されています。
研究論文などでは、光トポグラフィーではなくNIRSと記載されていることがほとんどです。
専門的な情報を調べるときには、光トポグラフィーではなくNIRSと検索してみてください。

簡単に検索してみると、光トポグラフィーの批判的な意見が載っているサイトがほとんど見つかりませんでした。
その検索結果だと、光トポグラフィーはかなりの性能だとの印象を持ちそうだと感じたため、記事タイトルを含め、かなり否定的に書いてみました。
研究も日々どんどん進んでいるはずですし、性能面でも費用面でも、もっと進化して欲しいなと思います。

追記:こちらもご覧いただけると嬉しいです。
光トポグラフィー検査の費用について思うこと

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